米粉ニュース

「コメと葡萄で6次化」

【掲載紙】 商経アドバイス
【掲載日】

2019年12月19日(木)

コメと葡萄で6次化
岡山県赤磐市・さくらさく農園 パンやグラノーラに
 岡山県の中山間地・赤磐市で規模の小さな棚田を守る「さくらさく農園」は、農閑期になると米粉パンの店を開く。栽培品目のコメと桃太郎ぶどうを生かしてグラノーラも作り、6次産業化法に基づく農水省の総合化事業計画にも選ばれた。農園主の佐倉弘昌・千恵子夫妻は、「楽しみながら続けていれば、いずれ後継者も生まれてくるのではないか。地域の魅力を後世まで伝えていく一助になれば、それだけでもうれしい」と、夢を描いている。
 同農園は7ヘクタールで主食用のにこまると米粉用の朝日、転作の大豆・小豆・麦を栽培するほか、半露地栽培で桃太郎ぶどうを栽培する。
 田植えはポット苗で、秋の稲ワラすき込みに、牛糞堆肥と菜種粕を散布して土づくりをする。元肥はあえて入れない。イモチ病やワンカが発生しても防除はしない。それでも反収7俵で、食味計測値は85点をたたき出す。経営面積は広くないが、圃場枚数は3キロ内の範囲ながら37枚にも及ぶ。これ以上の規模拡大は簡単には進められない。
 その分、夫妻はコメ加工に目を転じた。元々、子どもの友人にアレルギー症状を有する子が多かったため、少しでも安全な食べ物を与えたいと願う保護者の要望で平成元年から無農薬米を作っていた。米粉が注目された18年に、無農薬米で作った米粉パンを望む声が寄せられるようになり、地場産農産物の加工・販売を行う(株)アクティブ哲西に委託して米粉に製粉してもらい、米粉パンを始めた。
 アクティブ哲西が使っている製粉機は(株)西村機械製作所の「スーパーパウダーミル」で、澱粉損傷度が少なく、「ほかの製粉機でも試してみたが、膨らみが全く違った。“パン”として自信をもって売れる物を作るにはこの製粉しか無理だった」と、千恵子氏は当時を振り返る。現在は年間1トンほどの米粉を委託している。
 現在はパンが6~7割で残りはクッキーを焼いている。自家製の干しぶどうを混ぜたレーズンパンが一番人気だ。店舗は農閑期の週末3日間だけ開店する。3~10月は休業期間だ。「“無理な時期は無理”とはっきり割り切らないと続かない」としている。
 商品は徐々に増え、ハクトモチを玄米のまま焙煎し裸麦や黒大豆を加えた香ばしい「玄米グラノーラ」や、片手に持ってかじりやすいように固めた「バータイプ」グラノーラ、ぶどうとイチジクを混ぜてキャラメルで固めた「フルーツキャラメル」グラノーラも開発した。一房まるまる干しぶどうにした「一房の干しぶどう」もギフト需要を見据えて開発中だ。

 数々の商品開発に「楽しいですよ」と笑顔の夫妻。“できる限り自然に近い育成で”をポリシーに、手間を惜しまず正直な栽培と開発に努めている。

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