米粉ニュース

ヒノ米粉でコメ産業に貢献

【掲載】 商経アドバイス
【掲載日】

2022年10月10日(月)

◎ヒノ米粉でコメ産業に貢献

奈良県大淀町/南都食糧㈱ 「SPM」製粉工場建設

 関西市場で特定のユーザーから高い人気を得ている奈良ヒノヒカリだが、このヒノを使った米粉で地域の稲作を含めたコメ産業に貢献しようと歩み出したのが南都食糧㈱(小川洋一郎社長、奈良県大淀町)だ。登録検査機関として広く一帯の農家と親しい関係を築いており、主食用米の買い取りだけでなく、米粉としての出口戦略も農家に示していく。

 同社は本社精米工場隣りの敷地内に8月中旬、約1億4000万円をかけて米粉製粉工場を建設した。建物面積は125平方㍍。1日あたり6時間稼働で月間処理能力は約13㌧を誇る。庫内は原料米搬入室、洗米・製粉室、計量室、出荷室に分かれている。

 製粉機は㈱西村機械製作所(大阪府八尾市)の湿式気流粉砕製粉機「スーパーパウダーミル(SPM)」だ。原料米粉砕時の熱発生を抑えることでデンプンの損傷を最小限にとどめ、高品質な米粉が作れる。二次製品も、パンやケーキ、麵類など幅広い食品に加工できる。

 原料米の芯まで水分を染み込ませてから、コメ粒同士を高速でぶつけ合わせる方式のため、粉砕時の穀温上昇が小さく、デンプン損傷が少ない。粒度分布もバラつきが少なく、均質な粉が得られる。

 小川社長は、約10年前から米粉に関心を寄せていた。コロナ禍でコメ消費が鈍ったことや輸入小麦の高騰をきっかけに、ノングルテン工場の建設に踏み切った。国が事業再構築補助金を開始したこともプラスになった。

 商品開発に当たっては夫人の小川朋子氏が各地のセミナーや料理研究家を訪ね、米粉マイスター・インストラクター、米粉お菓子コースProfessionalなどの資格を次々に取得した。腕を磨くだけでなく、商品開発の考え方や米粉を使う意義なども吸収してきた。その結果、原料米には地元のヒノを使用すると決めた。「馴染みのある味がして、おいしい。地元産ヒノをご飯だけはなく、米粉食品の形でも味わってもらい、地元産ヒノの魅力を広めたい」(朋子氏)と意欲的だ。

 これまでパン、ケーキ、洋菓子、ニョッキ、とろみ付け、ピザなどさまざまな試作品を作成。「中には小麦粉食品以上においしい物もあり、目からうろこの印象を受けたこともあった」(小川社長)という。試食相手からは、揃って「本当にこれが米粉ですか」と尋ねられるほど好評だという。ふんわり感、モッチリ感、腹持ちの良さなどに驚かれるそうで、軌道に乗れば「古都米粉」のブランドで展開したい考えだ。

 原料米は米粉用米として、3件の農家と合計8㌶で栽培契約を結んでいる。うち1件の農家は無農薬栽培を目指して現在、栽培転換中だ。

「いまはまだゼロからのスタート。しかし体に良いから、というメリットはあるものの、おいしいからという理由で受け入れてもらえる製品を作っていきたい」という小川夫妻。その結果が、コメや米粉の消費拡大につながると確信している。

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