新需要の開拓目指す
【掲載】 | 日本食糧新聞社 |
【掲載日】 | 2024年10月16日(水) |
新需要の開拓目指す
普及尽力、販売先広がる
西村機械製作所は、 微粉砕で、でんぷん損傷の少ない気流粉砕機 「スーパーパウダーミル」が強みの米粉製粉機メーカーだ。卓上型「フェアリーパウダーミル」と併せて、米粉の新需要を開拓しながら普及に尽力している。
同社は、バウムクーヘン製造機械の不二商会との取り組みで、地元産米を粉砕し、そのままバウムクーヘンを 焼き上げて販売するピジネスモデルを提案してきたが、パンやめん 類スイーツなど、米粉を使った多様な商品が発売される中で、新たな商材として、洋菓子製造機械のパイオニア であるマスダックとタッグ、焼きたての米粉パンケーキを実演販売するというビジネスモデルの提案を開始した。
PR活動では、10月9〜11日に幕張メッセで開催される、農業界最大規模の商談会「JAGLI」に出展。小型気流粉砕機を展示し、米粉製粉の実演を行う。このほか「バウムクーヘン焼成機」や米粉商品事例、天然素材100%のマスターバッチなどを紹介する。
さらに会場で出会った顧客を中心に、より 深く米粉ビジネスや同社を紹介することを目的に10月30日、本社内で「米粉まつり」と称するイベントを開催。製粉機械の実演や先行事例についての講演などを行う計画だ。
一方、米粉需要の拡大に伴い、販売先も増加しており、石川トマト農園が運営する岐阜県恵那市の地元産米を 使った「KOKOKO バウムクーヘン」をはじめ、同県白川郷にある「エガオヤカフェ」、 北九州市の藤永産業など、新店が続々オープンしている。
また、最中種(皮)の製造企業の間で、気流粉砕による粒子の揃った米粉で焼成すると、製品が食感サクサクで割れにくいという評判が広がり、徐々に採用が増えているという。
自家製粉 生米粉100%使用
スイーツとベーグル人気 藤永産業「こめとら」
福岡県北九州市で、異業種が営む米粉スイ ーツ専門店「こめとら」が話題だ。鉄鋼関連事 業を営む藤永産業が運営し、自家製粉の生米 粉を100%使用した手作りスイーツやベーグルを販売するが、冷 凍しても味や食感に変 化がないことを確認し 9月、ネットショップを立ち上げ、全国販売にも乗り出した。 店舗の商品棚は「生米粉のスプレ」「生米粉のベーグル」を中心に、クッキーやどらや きが並ぶ。スフレはしっとり滑らかかつシュ ワッとした口溶けで、 シフォンケーキとも異なる独特の食感を有している。ペーグルもムギュ、モチモチとしたほかにはない食感で、プレーンや黒ごまチーズなど17品の豊富なラインアップも特徴だ。
食物アレルギーにも対応し、加工場では小麦粉は一切使用しないほか、ベーグル生地には卵や乳製品は不使用 (トッピングのみ乳製品使用)で、ブレーンをパン給食の日に学校に持って行く近所の小学 生もいる。何より家族や社員で焼き上げる手作り感を前面に打ち出し、小さな子どもにも安心して食べさせることができると好評だ。
店舗に隣接した工房 では、精米機と製粉機を設置。精米、製粉したての米粉をその場で 加工して、最終製品に焼き上げる。製粉は西村機械製作所製の小型米粉粉砕機フェアリーパウダーミルを採用し、湿式で微細粉、でんぷん損傷が少ない 上、乾燥工程を経ないため、焼き上がりのしっとり滑らか食感が特 徴だ。原料米には、高温耐性と良食味を両立させた「恋の予感」を採用。米粉事業の推進役である藤永隆史業務部次長は「当初は米粉専用米の使用も検討したが、試作したところ、 炊飯しておいしいコメの方が圧倒的においし かった」と、選定プロセスについて話す。
藤永次長は「われわれは素人集団だが、おいしさが口コミで広が り、昼過ぎには完売する日も多い。最近では、うわさを聞きつけ、他県のお客さまも増えてきた」と胸を張り、「秘訣は精米から製粉、加工までのリードタイムが短く、粉のダメージにつながる乾燥工程を経ない生米粉である点」と分析。目下、生米粉の特徴を生かしたカスタードプリンやシュークリームの開発も進めている。
同社は20年、アグリ事業に新規参入し、山口県宇部市でコメを生産するほか、地元JA からの委託を受け、育苗、集荷、ライスセンターでの乾燥・籾摺(もみずり)を経て倉庫に納めるとともに倉庫管理までを一貫して行っ ている。「近隣農家の所得向上につなげたい」 (藤永次長)という思いでコメの高付加価値化を目指し、情報収集する段階で西村機械製作所と出合い、開業にこぎ着けたという。
その一方で、宇部市も農家高齢化に直面し、離農により同社に任されるほ場が増え、 24年産は約3haだったは場面積も、25年産は約7ha、近い将来20ha 程度になる見込みという。そこで米粉事業の大規模化に伴い、人脈を生かした海外展開も視野に入れるなど夢は広がってきた。(佐藤路登世)