米粉ニュース

「第1回「こめこ祭り」」

【掲載】 商経アドバイス
【掲載日】

2022年1月1日(土)

(株)西村機械製作所
第1回「こめこ祭り」

◎楽しみながら米粉の世界を体験
 現在では「グルテンフリー」の言葉とともに広く知られるようになった「米粉」だが、20数年前には「コメでパンや洋菓子を作ることなどは不可能」とされていた。そんな当時から米粉の研究に取り組み、平成15年に初めて気流粉砕機を出荷した(株)西村機械製作所(大阪府八尾市)がさらなる米粉の認知度向上や市場開拓を目指して昨年12月10日、第1回「こめこ祭り」を開催した。新型コロナ感染防止対策に努める中、会場となった同社本社を訪れたのは同社の当初予想を超え、抽選で選ばれた12組の17人。近畿地方だけとどまらず新潟県、愛知県、島根県、熊本県からも参加した。またコメ卸・小売業者、生産者、食品メーカーなどの当業者だけでなく、新たなビジネスチャンスを求める人やアレルギーを有する子どもたちの食に危機感を抱く人など、一般消費者も含めて食に高い関心を持つ人々が集まった。

◎グルテンフリーが追い風に 原料安で普及の好機
 「こめこ祭り」開催に当たってあいさつに立った西村元樹社長は、米粉をめぐる情勢に言及。「コロナ禍などの情勢からコメの価格が下がっている。米粉用米制度による助成金も整備された。反対に輸入小麦は上がっており、原料の価格差は縮まっている。これまで米粉に不利とされてきた原料価格差で有利な展開になってきた」と指摘した。
 また「グルテンフリーの言葉が欧米でも聞かれるようになってきたのは、米粉の存在感が高まってきた現れではないか。われわれや関係者のこれまでの努力が浸透してきたのであれば、たいへんありがたいこと」と語り、米粉を支持する人々に感謝の気持ちを伝えた。
 コメは胚乳内部に細かい細胞の粒があり、それがいくつかのブロックに分かれた状態で細胞壁に囲まれ、複層的にデンプンを構成している。最も小さい細胞は直径2~9ミクロン。そのためでき上った米粉で2ミクロン未満の細胞があれば、デンプンが損傷していることになる。損傷率が高いと加水量が多くなり、パンの膨らみは弱く、日持ちも悪くなる。
 また粒子が大きいと、気泡が大きくバラつく傾向があり、細かいと気泡が小さくまばらになる。小さいとパンの食感が良く、口溶けも良い。細かいと焼き菓子は軽い食感になり、粗いと固い食感になる。
 同社の湿式気流粉砕米粉製粉機「スーパーパウダーミル(SPM)」と「フェアリーパウダーミル(FPM)」は、まず原料米を洗米して糠やホコリ、菌を洗い流す。コメを軟化させるための浸漬工程を経て、コメ粒内部まで給水ムラができないよう寝かせたあと、気流に巻き込んでコメ同士をぶつからせて微粉砕する。粉砕された米粉を約60度の温風に1~2秒さらし、瞬間的に乾燥させる。
 SPMは1時間当たり30~500キロ製造の大量生産プラント。粉砕機以外にコメタンク、洗米機、浸漬機、乾燥機などの設備を有する。FPMは5~10キロ製造の少量生産機。店舗内に設置して、すぐに2次製品に加工したい場合に向いている。
 令和3年10月現在で全国37ヵ所に導入されており、パン、洋菓子、ケーキ、麺などに2次加工されている。(株)不二商会(神戸市兵庫区)が技術指導する米粉バウムクーヘンに取り組む事業者も多い。
 西村社長はこれまでの同社の歩みについて要旨次のように振り返った。「20年前から米粉に携わってきたが、当時はグルテンを20%加えて米粉80%でようやく米粉パンができた。それでも『米粉がパンに使われるなんてすごい』といわれた時代だった。4~5年前から米粉100%のパンや洋菓子が広がり、作り手も増えてきた。SNSの発達で良い物がニーズのある所に届き、広がりが加速化してきた。米粉に向く品種としてミズホチカラも開発された」。

◎南都食糧「小麦粉以上に美味」 アルファ化粉で用途広がる
 SPM導入を決定した南都食糧(株)(奈良県吉野郡)の小川洋一郎社長が動機と今後の抱負を発表した。小川社長は約10年前から米粉に関心を抱いていたという。コロナ禍でコメ消費が鈍ったことをきっかけに、ノングルテン工場の建設を計画し、動き出した。国による補助金を受けられることも大きかった模様だ。1時間当たり100キロ製造の規模で、今年8月の竣工を目指している。
米粉試作品を食べた感想を小川社長は「中には小麦粉食品以上においしい物もあり、“目からうろこ”の印象。品質の良い米粉を安定して作れるように技術習得に励み、米粉食品を一般的な商品にしていきたい」と語った。
 すでに米粉の商品化に取り組んでいる事例として、社会福祉法人一麦会・ソーシャルファームもぎたて(和歌山県紀ノ川市)の中原力哉代表が取り組み内容をオンラインで発表した。もぎたては多くの障害者が働きながら、社会に貢献していける施設。障害者もプライドを持って働いているという。
 米粉作りでは、機械の操作を障害者に分担して割り振り、工程を単純化させて高品質なアルファ化米粉を製造している。西村機械が納品した膨化マシンでコメに高圧を加えてパフ化し、パフ化食品「おこめっこ」やアルファ化米粉を製造・販売する。多くの食品メーカーや料理研究家とタイアップし、料理への活用方法、食品開発、レシピ作りにも取り組んでおり、需要は毎年伸びているという。
アルファ化米粉の場合、どんな原料でも品質に左右されないという。玄米や白米、有色素米でも同じ操作方法で済む。特定米穀でも、大きさが揃っていれば問題ない。
 通常の米粉のみに対して、アルファ化米粉を加えると、クッキーを焼いた際のひび割れが防止されるほか、パンケーキがふんわりと浮き上がったような仕上がりになり、口溶けが良くなる。コロッケの衣が揚げた際にパンクしなくなり、衣のボリュームが増加。パンナコッタを作ると、通常の米粉100%よりもちょうど良い硬さで香ばしく仕上がり、コメの風味も漂うという。離乳食にも活用できるそうだ。
 中原代表は、「米粉自体が普及する中で、アルファ化米粉の認知度も年々上がっている。湿式製粉とアルファ化米粉の組み合わせで、いろんなバリエーションが広がっていく」と評価した。将来は有機の稲作に取り組み、6次産業化にも挑戦したい考えを持っている。

◎設備実演に感嘆の声 試食しながら個別に質問
 参加者たちは「製粉機見学・米粉食品試食」と「米粉食品試食・製粉機見学」の2組に分かれ、製粉工程や米粉食品の食味・口当たりを確かめて回った。
 工場ではSPM、FPMのほか、米粉の品質チェックを行う検査室やアルファ化ライスケーキマシンを見学。参加者は原料米の洗米、浸漬、水切り、テンパリングなどの各工程の実演にも見入っていた。熱心に質問する姿や、写真や動画を撮影する人も多かった。カタログや写真、言葉による説明だけでなく、実演を見たことで、「実際に米粉に加工されるプロセスが理解でき、満足した」との声も聞かれた。
 参加者からは製造能力や機械の仕組み、部品の構造、メンテナンスなどの質問が挙がった。。▽原料米の浸漬時間、水温、品種による違いなどを考慮する浸漬工程の重要性が品質に大きな影響を与える点が興味深かった▽フェアリーパウダーミルがコンパクトで扱いやすそう▽ライスケーキマシンのライスケーキもおいしいし、それを粉砕するとアルファ化米粉ができるというのは、目からうろこだった▽製造された米粉がとても細かくて感動した。使ってみたい▽思ったよりコンパクトで、音も想像していたより低かった―などの感想も寄せられた。
 試食会では、同時に個別相談会も行われた。試食には米粉のロールパン、ロールケーキ、バケット、パーニュ、窯出しコシヒカリパン、バウムクーヘン、リングイネ(オリーブ味)、スパゲティ(和風だし)、ヒエと黒米のコーヒーが提供された。いずれも米粉特有のしっとり感や風味が生かされた食品で、参加者たちは舌鼓を打っていた。 
 自らの事業に米粉を活用できるか、参加者たちは口々に西村機械の社員に▽米粉と相性の良い製パンの改良剤の情報があれば教えてほしい▽農作物は年々の気候などで品質が左右される。そんな中でも米粉の品質の安定化につながる技術や知見を▽SPMとFPMで米粉の品質に違いはあるのか▽いろいろな米粉で米粉パンを作っているが、うまくいく場合といかない場合がある。何が違うのか、見極め方があるのか-などと質問し、情報収集に努めた。
 また湿式製粉と乾式製粉の米粉をそれぞれ同量の水で溶いて粘りやサラサラ感を比較する参加者、▽アルファ化米粉での製パン方法▽米粉食品で最も需要がある食品▽米粉パンに向いた玄米粉の入手経路▷販売されている米粉の水分値を加工前に知る方法▽今後の米粉市場の展望-などを尋ねる人もあった。
最後に西村卓朗会長があいさつに立ち、「近畿農政局から『コメの消費が進まない。どうすれば』と聞かれ、『では粉で行こう』となった」と米粉研究に取り組むきっかけを紹介。ようやく広く普及し始めた現状を隔世の感で振り返りつつ、これまでの関係者への協力に謝意を示す言葉で締めくくった。
 西村機械は来年、第2回「こめこ祭り」を開催する予定だ。「メールマガジンやホームページ(http://www.rice-flour.jp/)も見逃さないで」と呼びかけている。

◎「若い農家に道示せる」
 このほかにも本紙記者に対し、「米粉が広がり、食材として消費者に無理なく受入れられる可能性を感じ、関心が強まった。かねがね玄米を普及させたいと思っていたため、消化しやすい玄米粉での商品開発を検討している」と考えて今年食品加工所を立ち上げる計画の岡山県の起業家は、「稲作を続ける親類のコメを原料にして勝負したい」と抱負を明かした。
 インターネットでコメの販売に取り組む熊本から参加したネット小売店の夫婦は、「若い農家に『一緒に進んでいこう、一緒に頑張ろう』と道を示してあげるためにも、『これだ』と言える商品化のヒントをつかみたかった」と、参加の目的を語った。

 個人で愛知県から参加した主婦は、「パン作りに興味があった。米粉はメーカーや商品によって品質が全く違うため、なぜなのか知りたかった。きょうの体験を生かして、家族においしい米粉パンを焼いてあげたい」と話していた。

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